【楽曲考察】SIX LOUNGE「天使のスーツケース」──愛と衝動を詰め込んだ、行き先のない青春ロック

2025年7月4日

「心を持っていく場所がない」
そんな夜に聴いてほしいのが、SIX LOUNGEの「天使のスーツケース」。

叫ぶようなボーカル、疾走するビート、むき出しの言葉。
でもそれだけじゃない。
この曲には、ぶつけきれなかった優しさや、片思いのような希望もちゃんと詰まっている。

そして何より、“どうしようもない自分”を肯定してくれる音楽でもあるんです。


タイトル「天使のスーツケース」って何?

「天使」と「スーツケース」。
一見ミスマッチな言葉の並びが、逆に心を引きつけますよね。

スーツケースとは、どこかへ行こうとする人が持つもの。
でも中に詰まっているのは、現実の荷物ではなく、
言えなかった愛、見せられなかった涙、誰にも見せたことのない夢。

つまりこれは、「まだ飛び立てない天使」の話かもしれないし、
「行き場を探して旅に出る魂」の話かもしれません。


楽曲ができるまで――「逃げ出すように、でも前を向くように」

SIX LOUNGEはこの曲を、2019年にリリースしたEP『天使のスーツケース』の表題曲として発表。
当時のバンドは、激しいツアーの真っ只中。
揺れるメンバーの気持ちと、それでも音楽を鳴らす覚悟が、この曲の中に色濃くにじんでいます。

「言葉にできないまま飲み込んできた想いを、全部詰め込んで放った」

この曲は、彼らにとって**“自分のままでロックする”ことの証明**でもありました。


歌詞の中にある“リアルな未完成”

「スーツケースにガラクタぶち込んで街を抜け出す」

この曲の歌詞には、立ち止まりながらも進もうとする矛盾した感情があふれています。
痛みや弱さを“見せない”ことで守ろうとする優しさ。
でも、それがかえって孤独を深めてしまうという皮肉。

それでも「明日を信じる」って言い切る。
そのまっすぐさに、ぐしゃぐしゃにされた心がちょっとだけ救われるんです。


音で殴って、最後に抱きしめてくるサウンド

この曲の魅力は、その音の“暴れ方”と“やさしさ”のバランス

イントロからギターはギラギラ、ドラムは突っ走り、
ボーカルはまるで怒鳴るように歌う。

でも、不思議と聴き終わったあとは、静かな余韻が残る
まるで、「泣いてもいいよ」と言われたような安心感すらある。

それがSIX LOUNGEというバンドのすごさ。
暴力的なくらい感情的なのに、ちゃんと人の心に触れてくる。


「旅に出る準備」はできてなくてもいい

「天使のスーツケース」は、まだ何者にもなれていない自分に向けられた歌でもあります。
夢に破れた人、立ち止まってる人、やりきれない感情を抱えたまま今日を生きている人。

そんな誰かの背中を、
「行きたいなら、行けるよ」って押してくれるロックソングなんです。


まとめ:愛も痛みも、全部詰めて旅をしよう

人生は、どこか遠くに行けば何かが変わるわけじゃない。
でも、「旅に出たい」と思ったとき、心の中にはいつだって「天使のスーツケース」がある。

それを引きずりながら、転びながらでも、進んでいく。
この曲は、そんなあなたに寄り添う旅のBGMです。