一度聴いたら忘れられない名前、そして、なんとも言えない多幸感と少しの切なさをまとったサウンド――
ラブリーサマーちゃんは、2010年代以降の邦楽シーンにおいて独自の存在感を放ち続けているシンガーソングライターです。
この記事では、彼女の楽曲の変遷をたどりながら、その魅力を探ってみたいと思います。
目次
◆ 宅録から始まった音楽の旅
ラブリーサマーちゃんは、ネット発の“宅録女子”として注目を集めました。
SoundCloudやYouTubeなどでの発表を通して、打ち込みと生音を織り交ぜた個性的なサウンドが話題に。
その特徴は、ポップで甘いのに、どこかノスタルジックで胸に刺さるという絶妙なバランス。
デビュー初期の代表曲である「あなたは煙草 私はシャボン」は、
無防備な歌声とゆらぐ感情をそのまま封じ込めたような名曲です。
◆ 2016年『LSC』でメジャーデビューへ
2016年のアルバム『LSC』では、それまでの宅録感を残しつつも、アレンジの幅が広がり、より洗練されたポップスへと進化しました。
「ベッドルームの夢」や「202」などは、90年代〜2000年代初頭のJ-POPを思わせるような懐かしさを感じさせながらも、現代的なセンスで再構築されています。
この頃から、“等身大の女の子像”ではなく、“音楽でしか描けない心象風景”を作り出す力が際立つようになりました。
◆ コロナ禍を経ての「THE THIRD SUMMER OF LOVE」
2021年に発表されたアルバム『THE THIRD SUMMER OF LOVE』は、コロナ禍という不安定な時期を通して制作された作品。
その分、どの曲にも孤独・不安・希望・自己肯定といった複雑な感情が溶け込んでいます。
特に「PART-TIME ROBOT」は、働きながら日々をやり過ごす人々の心に寄り添う楽曲として、多くの共感を呼びました。
一見キュートなサウンドの裏に、リアルな生きづらさをにじませるあたりに、彼女の表現者としての深化が見られます。
◆ 最新作では“自分だけの幸福”を探す
最新のリリースでは、さらにジャンルの垣根を超え、
シティポップ、アンビエント、オルタナティブ、ガールズパンク的要素を自在にミックスしています。
ただの“かわいい”にとどまらない、“かっこよさ”や“やさしさ”をまとったサウンドは、
どこかで迷子になっていた心をそっと照らすよう。
◆ ラブリーサマーちゃんがくれるもの
彼女の音楽を聴くと、「かわいい」や「ポップ」という言葉では表現しきれない、
ざらついた感情や見えない寂しさまで、音楽として肯定されるような感覚を覚えます。
それはきっと、彼女自身がいつも“自分の感情”に誠実だから。
無理にポジティブにならなくても、音楽の中では泣いてもいいし、立ち止まってもいい。
ラブリーサマーちゃんの音楽は、そんな場所をそっと用意してくれます。
◆ まとめ
ラブリーサマーちゃんの音楽は、時代や形式にとらわれない“自分だけのポップ”を貫いています。
ジャンルを横断しながらも、聴く人の心に優しく寄り添い続けてきたその足跡は、これからも多くの人にとっての“心のサマー”になることでしょう。
※紹介したアルバム・楽曲は各種サブスクで配信中。気になったらぜひチェックしてみてください。