春。それは穏やかで優しいだけの季節じゃない。
満開の桜の下で、こぼれ落ちるように、感情が暴れ出す瞬間がある。
きのこ帝国『春と修羅』は、まさにそんな「暴れたい春」を描いた楽曲。
やさしいメロウなギターロックを得意としていたバンドが、激しいディストーションとむき出しのボーカルで挑んだ、感情爆発型の一曲です。
心の奥で爆ぜる「春と修羅」
タイトルの「修羅」は、まさにこの曲の中核。
平穏な春の日差しの中、心の中では確かに“戦っている”感情がある。
そしてこの曲は、それを我慢せず、飾らず、「爆発」させる選択をとっている。
あいつをどうやって殺してやろうか
この一行に込められたのは、あきらめでも、癒しでもない。
むしろどうしようもない苛立ちと嫌悪。
その叫びが、音として形をもって迫ってくる。
サウンドは、静と動のカオス
前半はまだ抑えている。だけど、それが逆に怖い。
抑えているほど、後半の爆発が暴力的に響く。
ギターは轟音、ドラムは容赦ない。
きのこ帝国の美しさはそのままに、バンドサウンドがむき出しのエモさで暴れ回る。
まるで、壊れそうな心を一度わざと壊して、それでも生きていくための音楽のように。
“春”は、再生じゃなくて終末だったのかもしれない
『春と修羅』は、ふわっとした再出発の春ソングではない。
むしろ、終わりを認めることから始まる春。
なんかぜんぶめんどくせえ
このフレーズが美しいのは、春を讃えているからじゃない。
「何かが壊れるときにしか見えない美しさ」がそこにあるからだ。
この曲を聴いてほしい瞬間
- 感情がコントロールできない夜
- 誰にも届かない声を抱えているとき
- 自分の中の“怒り”をちゃんと認めてあげたいとき
この曲は、「泣くな」とは言わないし、「前向け」とも言わない。
ただ、今の自分の感情を全部ぶつけていい場所をくれる。
それが、『春と修羅』なんです。
おわりに
『春と修羅』は、きのこ帝国の代表曲のひとつでありながら、他のどの曲とも違う“感情の極限”を描いた異色のロックソングです。
優しいだけの音楽では足りない夜にこそ、再生ボタンを押してほしい。
あなたの中の“修羅”に火をつけてくれるはずです。