感情が剥き出しになる夜に──きのこ帝国『春と修羅』が鳴らす、叫びのロック

2025年6月26日

春。それは穏やかで優しいだけの季節じゃない。
満開の桜の下で、こぼれ落ちるように、感情が暴れ出す瞬間がある。

きのこ帝国『春と修羅』は、まさにそんな「暴れたい春」を描いた楽曲。
やさしいメロウなギターロックを得意としていたバンドが、激しいディストーションとむき出しのボーカルで挑んだ、感情爆発型の一曲です。


心の奥で爆ぜる「春と修羅」

タイトルの「修羅」は、まさにこの曲の中核。
平穏な春の日差しの中、心の中では確かに“戦っている”感情がある
そしてこの曲は、それを我慢せず、飾らず、「爆発」させる選択をとっている。

あいつをどうやって殺してやろうか

この一行に込められたのは、あきらめでも、癒しでもない。
むしろどうしようもない苛立ちと嫌悪
その叫びが、音として形をもって迫ってくる。


サウンドは、静と動のカオス

前半はまだ抑えている。だけど、それが逆に怖い。
抑えているほど、後半の爆発が暴力的に響く

ギターは轟音、ドラムは容赦ない。
きのこ帝国の美しさはそのままに、バンドサウンドがむき出しのエモさで暴れ回る

まるで、壊れそうな心を一度わざと壊して、それでも生きていくための音楽のように。


“春”は、再生じゃなくて終末だったのかもしれない

『春と修羅』は、ふわっとした再出発の春ソングではない。
むしろ、終わりを認めることから始まる春

なんかぜんぶめんどくせえ

このフレーズが美しいのは、春を讃えているからじゃない。
「何かが壊れるときにしか見えない美しさ」がそこにあるからだ。


この曲を聴いてほしい瞬間

  • 感情がコントロールできない夜
  • 誰にも届かない声を抱えているとき
  • 自分の中の“怒り”をちゃんと認めてあげたいとき

この曲は、「泣くな」とは言わないし、「前向け」とも言わない。
ただ、今の自分の感情を全部ぶつけていい場所をくれる
それが、『春と修羅』なんです。


おわりに

『春と修羅』は、きのこ帝国の代表曲のひとつでありながら、他のどの曲とも違う“感情の極限”を描いた異色のロックソングです。
優しいだけの音楽では足りない夜にこそ、再生ボタンを押してほしい。

あなたの中の“修羅”に火をつけてくれるはずです。