― 静かに心を濡らす音たち ―
雨音に包まれると、心の奥まで静けさが染み込んでくるような気がします。
そんな時に聴きたくなるのは、やさしくも切なく、どこか懐かしさを帯びた音楽。
今回は、雨の日にぴったりな5曲を選びました。
ひとりの時間にも、誰かを想う夜にも、そっと寄り添ってくれるような曲たちです。
1. 雨 / 羊文学
雨が降り出してきみをおもう 傘は置いてきた
幾つもの夜を越えてから また会いましょう
羊文学が描く「雨」は、憂鬱でも悲しみでもなく、ただそっと降る感情のよう。
歌詞ににじむ“会えない誰か”の存在が、胸の奥をやさしく刺激します。
ギターの余韻と、塩塗られたようなボーカルが、心にじんわりと広がっていきます。
2. Ame (A) / サカナクション
雨は気まぐれ つまり心も同じ
電子音の中に流れる懐かしさ。
サカナクションらしい浮遊感と、雨粒のように細かく刻まれるリズムが心地よく重なり合います。
恋と記憶と、ひとしずくのセンチメントが静かに溶け込んだ一曲です。
3. 晴る / ヨルシカ
晴れに晴れ、花よ咲け 咲いて晴るのせい
降り止めば雨でさえ 貴方を飾る晴る
タイトルには「晴れ」があるけれど、この曲に通うのは「雨のあと」の物語。
涙とともに濡れたままの心を、静かに、でも力強く前に進めてくれる曲。
ヨルシカの繊細な言葉選びと、爽やかさの中にある痛みが、美しく響きます。
4. Rain / 秦 基博
どしゃぶりでもかまわないと
ずぶぬれでもかまわないと
しぶきあげるきみが消えてく
路地裏では朝が早いから 今のうちにきみを捕まえ
行かないで 行かないで そう言うよ
大江千里の名曲を、秦基博が包み込むような声でカバー。
ピアノの旋律とともに、雨の街角に立つ“あの頃”の自分と、静かに再会するような感覚。
雨を優しく肯定してくれる、永遠に色褪せない一曲です。
5. 曇天 / 吉澤嘉代子
「わたしの中の 曇り空が
また今日も泣いてる」
湿度を帯びたボーカルと、少しノスタルジックなアレンジ。
“曇天”というグレーな空模様の中で、自分の心の奥をそっと見つめるような時間。
まるで一篇の詩を読むように、じんわりと感情が染みてくる一曲です。
雨の日だから、出会える音がある
雨音に混ざるメロディ、傘の中で浮かぶ記憶、濡れた風景に重なる言葉たち。
晴れの日には聴こえない“心の声”が、静かに現れるのがこの季節なのかもしれません。
コーヒーを淹れて、窓の外の雨を眺めながら、
今日だけは少し立ち止まって、音楽と過ごしてみませんか。