心の温度を上げる音楽――ラブリーサマーちゃんの軌跡と魅力

2025年6月20日

一度聴いたら忘れられない名前、そして、なんとも言えない多幸感と少しの切なさをまとったサウンド――

ラブリーサマーちゃんは、2010年代以降の邦楽シーンにおいて独自の存在感を放ち続けているシンガーソングライターです。

この記事では、彼女の楽曲の変遷をたどりながら、その魅力を探ってみたいと思います。

◆ 宅録から始まった音楽の旅

ラブリーサマーちゃんは、ネット発の“宅録女子”として注目を集めました。

SoundCloudやYouTubeなどでの発表を通して、打ち込みと生音を織り交ぜた個性的なサウンドが話題に。

その特徴は、ポップで甘いのに、どこかノスタルジックで胸に刺さるという絶妙なバランス。

デビュー初期の代表曲である「あなたは煙草 私はシャボン」は、

無防備な歌声とゆらぐ感情をそのまま封じ込めたような名曲です。

◆ 2016年『LSC』でメジャーデビューへ

2016年のアルバム『LSC』では、それまでの宅録感を残しつつも、アレンジの幅が広がり、より洗練されたポップスへと進化しました。

「ベッドルームの夢」や「202」などは、90年代〜2000年代初頭のJ-POPを思わせるような懐かしさを感じさせながらも、現代的なセンスで再構築されています。

この頃から、“等身大の女の子像”ではなく、“音楽でしか描けない心象風景”を作り出す力が際立つようになりました。

◆ コロナ禍を経ての「THE THIRD SUMMER OF LOVE」

2021年に発表されたアルバム『THE THIRD SUMMER OF LOVE』は、コロナ禍という不安定な時期を通して制作された作品。

その分、どの曲にも孤独・不安・希望・自己肯定といった複雑な感情が溶け込んでいます。

特に「PART-TIME ROBOT」は、働きながら日々をやり過ごす人々の心に寄り添う楽曲として、多くの共感を呼びました。

一見キュートなサウンドの裏に、リアルな生きづらさをにじませるあたりに、彼女の表現者としての深化が見られます。

◆ 最新作では“自分だけの幸福”を探す

最新のリリースでは、さらにジャンルの垣根を超え、

シティポップ、アンビエント、オルタナティブ、ガールズパンク的要素を自在にミックスしています。

ただの“かわいい”にとどまらない、“かっこよさ”や“やさしさ”をまとったサウンドは、

どこかで迷子になっていた心をそっと照らすよう。

◆ ラブリーサマーちゃんがくれるもの

彼女の音楽を聴くと、「かわいい」や「ポップ」という言葉では表現しきれない、

ざらついた感情や見えない寂しさまで、音楽として肯定されるような感覚を覚えます。

それはきっと、彼女自身がいつも“自分の感情”に誠実だから。

無理にポジティブにならなくても、音楽の中では泣いてもいいし、立ち止まってもいい。

ラブリーサマーちゃんの音楽は、そんな場所をそっと用意してくれます。

◆ まとめ

ラブリーサマーちゃんの音楽は、時代や形式にとらわれない“自分だけのポップ”を貫いています。

ジャンルを横断しながらも、聴く人の心に優しく寄り添い続けてきたその足跡は、これからも多くの人にとっての“心のサマー”になることでしょう。

※紹介したアルバム・楽曲は各種サブスクで配信中。気になったらぜひチェックしてみてください。